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PTSDに対するEMDRの治療効果については、科学的根拠が示されてきていると思います。

最近の相談で多いのが、『EMDRを受けたら悪くなった』『EMDRを受けたがなにも変わらなかった』という相談です。

 

EMDRで悪くなる

EMDRでは両側性刺激(BLs)と呼ばれる、左右交互の刺激を用います。この刺激を行うことで、トラウマ記憶にアクセスしやすくなります。この状態は、別の表現をすると、フラッシュバックが起きやすい状態と言えます。つまり、EMDRの手続きというのは、そもそもフラッシュバックを誘発する可能性がある手続きということになります。その為、資格を持った人が行う必要があります。

EMDRをして調子を崩される方の多くは、「解離」という症状によって調子が悪くなります。「解離」とは、PTSDの本質的な症状になります。この解離とは、トラウマ記憶の断片化です。記憶が断片化されると、幾つかの問題が起きてきます。その一つに、過去と現在がごちゃごちゃになるというものがあります。

過去と現在がごちゃごちゃになると、過去のトラウマが現在も起こっているように感じます。今、そのトラウマを体験しているかのような感覚もおきます。これがいわゆる侵入症状(フラッシュバック)になります。

通常の生活をしているとき、PTSDを持っている方は、過去の記憶を封印しようとしています。その為、『まるで、過去の体験は他人の経験のような気がする』『いきなり、今のこの時間に生まれてきた/ワープしてきた気がする』という体験をするのです。これは、過去と現在を切り離そうとするために起こる感覚です。

EMDRの両側性刺激(BLS)は、この過去と現在を一回ぐちゃぐちゃにして、トラウマ記憶を呼び起こすことで、治療を行います。解離の症状が強くないPTSDの方は、ある程度のEMDRの治療の中でこの整理がついていくことになります。

一方、解離症状が強い場合は、この過去と現在の記憶のぐちゃぐちゃが大きいため、侵入症状(フラッシュバック)が誘発されたままの状態で、その日のカウンセリングをおえてしまうことが有るのです。

その為、治療が終わった後の、帰りがけにフラッシュバックがどんどん出たり、何日か後に気持ちの悪い状態が続くことがあります。中には、両側性刺激を受けただけで、フラッシュバックが誘発されることが感覚的にわかるために、EMDRの治療が怖くなってしまう方もおられます。

これが悪くなると言われる方に多く起きています。

 

EMDRを受けたがなにも変わらなかった

この相談も多いです。EMDRを受けたが症状が変わらなかった場合。ルーピングやブロックと呼ばれる堂々巡りの現象が起こっていることがほとんどです。ルーピングとは、両側性刺激(BLS)を受けても、同じような考え・イメージがぐるぐると堂々巡りを起こして、治療がすすまない状態です。ブロックとは、ある信念が頑なに残り続けており、治療が進まない状態になります。

トラウマ記憶には、通常では何らかの認知(考え)が埋め込まれています。例えば、『この事件の責任は自分にある』という認知(考え)です。EMDRの治療では、この考えに対して、治療を行うというなります。EMDRを受けると、『この事件は、回避不能だった。自分には出来る限りのことはやった』という形になっていきます。

ルーピングもブロックも共に、頑なに信じている信念が背景にはあります。この背景にある信念に対して何らかの介入を行わなければ治療は進みません。

 

どのような対処を行うのか?

解離が起きる理由としては、圧倒的な恐怖感のために、治療を受けている方が解離という方法を使わざるをえない状況になります。そのため、催眠状態でトラウマ記憶へのアクセスを制限する方法があります。

また、BLSの回数や方法を調整して、解離の状態が起こらないようにすることも考えられます。時には、グラウンディングと呼ばれるような方法を付加的に用いることもあります。

解離の病理が強く、解離性同一症のような状態になっている場合は、自我状態療法を付加的に用いることもあります。

ルーピング・ブロックに対しては、慈愛に焦点化したEMDR(Compassion focused EMDR:CF-EMDR)を用います。私は、2015年からCF-EMDRを用いています。今まで、通常のEMDRではルーピングやブロックでとても困っていたのですが、CF-EMDRを用い始めた所、ルーピング・ブロックは起こらなくなりました。

 

 

 

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カテゴリー: EMDR