Pocket

グラウンディングとは

グラウンディングとは、英語のground「大地」を意味する言葉からきており、地に足を付けることを意味しています。堅実で確実に物事を進める様子のことを「地に足をつける」といいますが、ここでは現実感を失ってふわふわとした感覚に陥ってしまうときに、自分の足で大地を踏みしめて現実の世界にしっかりと立つこと、そのためのテクニックをグラウンディングと呼んでいます。

 

解離性障害やPTSDをもっていると、日常生活の中でたびたび離人感や現実感の喪失といった症状に襲われ、今ここに生きている自分を不確かなものとして感じてしまうことが多くなってしまうため、さまざまな場面で不安や恐怖を感じやすくなってしまいます。

 

解離は健康な人にも見られ、心が現実に適応するための手段として起こす現象です。本来は自分の心を守るために起こる現象ですが、耐えがたい苦痛や不安に満ちた現実をなんとか生き延びようと、自分の心を「今ここ」にいる体や意識から切り離すことを繰り返すうちに、日常的に現実感を失ってしまったり、自分が自分でない感覚を繰り返し体験するといった症状が現れるようになります。一時的に自分の身を守り、知らず知らずのうちに身につけたサバイバル手段であるともいえる解離が自分を苦しめてしまう場合、専門的な治療を受けて対処法を身につけておかなくてはなりません。

 

また、PTSDを持つ人に多く起こるフラッシュバックは、つらい出来事を心の中で消化することができないまま冷凍保存された記憶が、さまざまなきっかけで突然解凍され、表面化して暴れだす現象です。当時の自分を守るために抑圧してきたトラウマ記憶がよみがえると、まるでその出来事が目の前で起こっているかのように感じられたり、その当時の感情や身体感覚が再び現れ、「今ここ」に生きている自分を感じることが難しくなってしまいます。

 

このような、「今ここ」で生きる自分を見失ってしまいそうになった時、体から切り離された意識を自分の力で現実につなぎとめておく方法として、グラウンディングというテクニックが役立ちます。

 

 

グラウンディングの方法

グラウンディングでは、体で感じる五感に意識を集中させ、「今ここ」にいる自分を感じるようにします。フラッシュバックや解離の症状は「いつ」「どんな状態」の時に起きるか分からないことが多いため、どんな場所でも、どんな姿勢であっても行える自分なりのやり方をいくつか覚えておくと良いでしょう。座った状態であれば、そのままの姿勢で足踏みをしたり手をトントンと叩くことで自分の体の感覚に意識を集中させます。また、体の中心を意識するように深く呼吸し、可能であれば水を飲んだり、「今ここ」にいる自分に戻れるようにします。

 

次に紹介するのは、体の五感や頭を使ったグラウンディングのテクニックです。やりやすそうなものを選んで練習してみましょう。

 

 

・54321法

今ここで目に見えているものを5つ確認します。(例:置き物、植物、車、テレビ、本など)

体に触れて感じているものを4つ確認します。(例:床、椅子の背もたれ、服の袖、風など)

聞こえている音を3つ確認します。(例:通り過ぎる車、鳥の声、自分の息の音など)

匂いを2つ確認します。(例:室内の匂い、お茶の匂い、好きな匂いを思い浮かべても可)

自分の好きなところを1つ確認します。(例:目、口、優しいところなど)

それぞれに見えるものを一つずつ数えていっても良いですし、心の中で確認しても良いでしょう。

また、見えているものの色や形に注目して数える方法もあります。(例:白い物を5つ、黒い物を4つ、青い物を3つ、茶色い物を2つ、自分の好きなところを1つ、など)

 

・好きな歌を歌う。

 

・簡単な計算をする。

足し算、引き算、掛け算、割り算など。簡単な数字から始めて徐々に難しくしていくのも良いでしょう。数や正誤にはこだわらず、心に思い浮かんだ数字から始めても良いですし、カレンダーや文字盤など目につくところに数字があれば、見えている数を足したり引いたりしてみるのも良い方法です。

 

・ツボ押し、マッサージ

人間の体にはいたるところにツボがあり、刺激することでさまざまな不調を和らげることができます。グラウンディングでは、目立つことなく簡単に刺激することのできる手のひらを中心にツボを押さえます。自分の指が触れているところに意識を集中させ、その刺激の気持ちのいい感覚もじっくりと味わいます。

また、肩を揉んだり腕を軽くさするなどのマッサージを行うのも良いでしょう。

 

・感触、感覚を確かめる。

クッションやぬいぐるみなどの柔らかいものや、冷たい氷、固い石、握りしめることのできるボールなど、身近にあるものを手に持って、その感覚を味わいます。柔らかな肌触りや抱きしめる感覚、物に触れている腕の感覚や重さなど、ひとつずつ集中して感じてみましょう。ブレスレットや時計など、普段から身につけているものを触ったり手に持ってみる、ペンダントやハンカチに触れてみるなど、ストレスを感じた時にすぐに試せるものをグラウンディングに応用すると良いでしょう。

 

・音や香りに集中する。

その場で感じることのできる音や香りを探します。(例:食器の音、パンの香り、風の音、鳥の声など)

静かな音楽をじっくりと聴く。外から聞こえてくる音を一つずつ注意して聞く。

好きなアロマオイルや香水をティッシュに数滴たらして持ち運べるようにしておくと、必要なときに取り出して香りに意識を向けることができるため、便利です。また、果物や石鹸などの身の回りにあるものから、自分にとって好きな香りを見つけておくと安心できます。

Pocket

カテゴリー: PTSD トラウマ