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PE療法(持続エキスポージャー)とEMDRの違いをまとめます。この両者は、PTSDに対する治療法の中で確固たる地位を持っています。特に、NICEガイドラインでは、薬物療法(SSRI)さえもセカンドラインで、PEとEMDRがファーストラインに位置づけられおり、PTSD・トラウマ治療を考える上でとても重要な治療法です。

エビデンスという点ではPE療法がゴールドスタンダードです。EMDRは、PE療法に準ずるという位置づけになり、辛口のレビューでは、EMDRはSSRIと同じく、エビデンスが不十分とされる場合があります。

 

治療対象

どちらも、PTSDに対しては、効果があります。PTSDは、虐待、DV、性被害、犯罪被害、交通事故、自然災害などの生死に関わるような出来事で発症します。基本的には、これらの外傷体験を持っている人が対象になりますが、細かい差があります。

・PE療法

PTSDの診断基準を満たすことが必要です。特に、A基準(生死に関わるようなトラウマ)を満たさないトラウマ(例えば、パワハラ等)は、PEの対象にはなりません。また、トラウマ記憶が不鮮明な場合(虐待等による解離性健忘や、交通事故による逆行性健忘などによるトラウマ記憶の喪失)は、治療することができません。

また、解離性障害が全面に見えている疾患は、暴露中に解離が起こるため、解離のコントロールを十分にしてからPE療法の適応になります。ただし、PTSDに伴う多少の解離は、熟練したPEセラピストならば可能です。一方で、解離性障害のみの場合はPEの治療の対象にはなりません

自閉スペクトラム症への適応は、よくわかっていません。しかし、効果がある場合も多いそうです。

・EMDR

PTSDのA基準(生死に関わるようなトラウマ)を満たさないトラウマ(例えば、パワハラ)にも効果があります。

解離性障害に関しても適応があります。解離性同一性障害などの重い解離性障害に対して、自我状態療法など研究された追加の方法があります。

自閉スペクトラム症への適応は、よくわかっていません。しかし、効果がある場合が多いです。

 

治療の特徴

PEもEMDRも、情報処理理論の治療原理に基いた治療法です。つまり、トラウマによってトラウマ記憶が断片化され、その断片化された記憶の中で、トラウマの中核になっている記憶を賦活させることで、治療をしていきます。しかし、その治療には若干の違いがみられます

・PE療法

PEは基本的に10回の治療で終わります。多くても15回までです。その時点で治りきらない場合は、治療が打ち切られて、自分で頑張る必要がります。しかし、研究上は、15回で無反応だった人は、その後の追加のセッションをしても効果は上がらないとされています。また、週に1-2回(ほぼ毎週)しなければいけないということもあります。

また、トラウマ体験が複数ある場合は、主要なもののみが選択されます。一つのトラウマが綺麗に処理されれば、別のトラウマにも効果が及びます。

認知行動療法の一つのために、宿題が出されます。それは、呼吸法、生活内暴露、想像暴露(暴露のテープを聞く)、セッション中の録音を聞くなどの宿題があります。宿題は、治療者がクライアントの様子をみながら調整します。

いわゆる再発防止計画を含むため、治療後の再発・再燃を抑える方法を身につけます。スキルを身につけるという感じになります。

・EMDR

EMDRは、10-16回程度と幅があります。これは、トラウマの数によって影響を受けます。そのため、治療が長引くことがよくあります。特に、PTSDを発症したトラウマ体験より以前にトラウマ体験がある場合は、治療が長引くことになります。

基本的には宿題はありません。最初は、安全な場所と呼ばれるエクササイズを行い、それを自分でやるように行われます。

治療終了後には、安全な場所というスキルは残りますが、トラウマに対する暴露のようなスキルは練習しません。新規のトラウマが生じた場合は、再度EMDRを行う必要があります(そのようなことは、ないと思います)。

いわゆる、震災後などの”手当”として、EMDRを用いることができます。

 

治療の苦痛度

・PE療法

フラッシュバックの内容を想像暴露するため、非常に苦痛が伴います。また、その内容を録音し、課題として行うため、非常に辛いでしょう。トラウマ記憶へのアクセスをかなり強くするため、治療が短期化しやすいです。

PE療法では、トラウマ記憶へのアクセスしすぎの状態をオーバーエンゲージメント、アクセスできない状態をアンダーエンゲージメントと呼びます。

 

・EMDR

PEに比べて苦痛が少ないと言われますが、EMDRにおいても除反応と呼ばれる、フラッシュバックのような現象が起きます。そのため、苦痛度の最大はEMDRも案外変わらないかもしれません。トラウマ記憶へのアクセスはPEに比べて低めになっています。そのため、治療中に感じる苦痛の平均はPEに比べて低いでしょう。トラウマ記憶へのアクセスの負荷を下げようとする工夫をすればするほど、治療が長期化してしまいます。

 

まとめ

・PE療法

トラウマがPTSDである必要がある、 短期間、自助努力が必要、高い苦痛を何度も経験、トラウマ体験の記憶が必要(虐待等で解離性健忘が起こっている場合に、身体感覚のみの再体験等が起こりやすい)

・EMDR

トラウマがPTSDであるかを問わない、長期化する可能性、自助努力はそんなに必要ではない、高い苦痛はないこともないが比較的楽、トラウマ体験に関する身体感覚のみでも可(虐待等で解離性健忘が起こっている場合に、身体感覚のみの再体験等が起こりやすい)

 

という感じでしょうか。ただ、両者の比較は私個人の感想です。どちらを使うか、どちらが向いているかは、使い分けていく必要があるでしょう。

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カテゴリー: EMDRPTSD トラウマ